治療法は?

 ウイルソン病の治療法には大きく別けて2種類の方法があります。ひとつはD−ペニシラミンや塩酸トリエンチンという飲み薬による薬物療法。もうひとつは銅の少ない食事をとり、からだへの銅の蓄積を増やさないという食事療法です。
 2つとも非常に大切ですが、治療の主体は100%近くといっていいほど薬を服用することです。食事療法は補助的と考えてよいでしょう。食事療法だけでは良くならず、少しずつ悪くなります。
 

<薬物療法:薬がどのようにはたらくのか>

 ウイルソン病で体にたまった銅を血液を介して尿中へ排泄する薬(キレート薬)を使用します。このキレート薬は血液中の銅のイオンをカニのはさみのように挟んで結合して安定し、それが尿中へ排泄されます。このキレート薬がD−ペニシラミン(商品名:メタルカプターゼ)塩酸トリエンチン( 商品名:メタライト-250)です。

【 D−ペニシラミン(メタルカプターゼ)】

 ウイルソン病の第一選択薬です。強いキレート作用をもち、からだの中の銅を排泄するのに効果的です。ただし、強い薬はやはり副作用も多く、飲み始めてから1〜2週間後に発熱、発疹がでたりすることがあります。この場合は少し薬を休んでまた少ない量から始めたりしてうまくいくことがありますが、腎臓が悪くなったり神経症状が出たりした場合はやむを得ず中止して塩酸トリエンチン(メタライト)へ変更することがあります。

【塩酸トリエンチン(メタライト-250)】

 
この薬はD−ペニシラミンが服用できない場合に用いられます。キレート作用はマイルドですが副作用はほとんどありません。まれに軽度の貧血がある程度です。
 

<薬は1日のなかでいつ飲むのが効果があるか>

 これらキレート薬は飲んだあと胃と小腸より吸収されて血液中に入り、そこでよけいな銅と結合し、尿中へ排泄されます。ですから比較的すみやかに血液中にはいることが大切です。それはすなわち、薬を胃や腸が空っぽのとき、『空腹時』に飲むことが一番大切です。それは食事3〜4時間後、食事1〜2時間前を中心とした『食間』とすると時間を決めやすいと思います。食後すぐや食事と一緒に薬を飲むと、食べ物と混ざって薬の吸収が大幅に邪魔されて、せっかく毎日薬を飲んでも効果がありません。たとえ食べ物のなかの銅と薬が胃や腸のなかで結合しても、それは非常に効率の悪いもので治療にはなりません。
 銅キレート薬は、生涯服用し続けなければなりません。これは大変なことですが、やはり『一生飲み続ける』のが大原則です。ただし経過中に尿中の銅排泄量や症状の程度で薬の量を減らせる場合もありますが、これはあくまで主治医の指示にしたがって決める事です。



【亜鉛製剤】

 この薬は、胃や腸において食物中の銅の吸収を防ぐ作用があります。亜鉛製剤は、食前1時間以上もしくは食後1時間以上あけた比較的空腹な時に服用します。
 現在亜鉛製剤は日本では認可されていません。認可申請にむけて次のような現状です。


わが国における亜鉛製剤の認可申請の現状について

                       ウイルソン病友の会会長 小峰 恵子

  現在、ウイルソン病の治療薬として、D−ペニシラミン(商品名メタルカプターゼ)、塩酸トリエンチン(商品名メタライト)がキレート剤として使われています。これらの作用は、体内の銅を取り除くことを目的としています。亜鉛製剤はこれらのキレート剤とは異なり、食物中の銅が体内に入るのを止める役目をします。
すでに亜鉛製剤は米国でウイルソン病治療薬(FDA承認)として認可され、使われています。欧州でも近く認可される予定で、中国、韓国でもすでに亜鉛製剤が使われています。日本では認可されていません。日本のウイルソン病を研究している医師らは亜鉛製剤の認可を求めています。私たち患者も早い認可を要望したいと考えます。現在、ノーベルファーマ株式会社がウイルソン病治療薬としての日本における酢酸亜鉛製剤の治験(臨床試験)を計画しています。いずれ近いうちに治験が始まると思います。治験終了後、   厚生労働省に申請が行われます。早くてこれから3年後に認可されるようですが、それ以上かかる場合も十分に予想されます。 友の会として、厚生労働省に亜鉛製剤の早期許認可の要望書提出を行いました。亜鉛製剤の認可に先立って、私たち患者、家族としましては、亜鉛製剤についての正しい知識を持つことが大切だと思います。『亜鉛製剤は具体的にどのような作用をしてウイルソン病に効果があるのか、服用にあたっての注意点は何か、キレート剤との関係はどうか、』などを、十分に知っておきたいと考えます。これらについて先生方から会報に原稿をいただいたり、友の会大会などでお話していただきたいと思います。

会員の皆様方からも亜鉛製剤についての質問を事務局にお寄せください。
 

 ウイルソン病の治療に欠かせない低銅食について東邦大学医学部付属大橋病院「栄養部 」

山崎 大治先生 が執筆した文を以下に紹介します。

  

低銅食について

 

東邦大学医学部付属大橋病院

                                                                            栄養部 山崎 大治

 

 皆さんこんにちは、今日も、低銅食について少しお話をさせて戴きます。

 ウイルソン病は、銅の排泄が出来ないので食事からの銅を少なくする、すなわち低銅食に する必要があります。

皆さんのお話をうかがうと銅の含有の多い食品は食べない。含有の少ない食品はたくさん食べてもいい、というイメージを持っておりますが、含有の多い、少ないという表現は100g中に何mg入っているから多い、何mg入っているから少ないという表現をしております。

 しかし、私たちは全ての食品を100g食べているわけではありません。1gであったり、3gであったり、200gであったりまちまちですので、実際に食べた量で判断する必要があります。

 例をあげると、多いとされている海苔やコショウは、100gでみるとそれぞれ0.55mg、1.20mgとなっておりますが、実際に食べる量は海苔は1gで、コショウは0.1gですから、それぞれ0.0055mg、0.0012mgと少なくなります。その反対に少ないといわれているごはんやフルーツのオレンジは、100g中で見るとそれぞれ0.1mg、0.06mgと少ないですが、大人ですと1回にごはんを200gぐらい食べますし、オレンジを1個食べると200gありますので、それぞれ0.2mg、0.12mgと多くなり、ごはんは13回食べると0.6mgにもなるわけです。

 お菓子のチョコレートでも、皆さん敬遠をしておりますが、100g中には0.55mg入っておりますが、最近1包みが5gのものがあり2個食べても10gで0.055mgとなり、まったくダメではないのです。しかし、少し食べることによりたくさん食べたくなるという人は問題ですが……。

 すなわち、食べた量が問題になる訳ですから、1日の食事をチェックすることが必要で、大切になるわけです。

 参考に食品中の100g銅含有量と常用量(目安量付記)の銅含有量を表にまとめましたので、利用してください。しかし、銅含有量の多い食品と少ない食品を知っておくことは重要なことです。最後には避けるべき食品と推奨される食品の表も記載いたしましたので参考にして下さい。

 食事を楽しく食べるには、薬の飲み忘れや飲まないことがいけないことです。たまには銅の1日摂取量をオーバーしても惰薬さえなければそんなに問題にはなりません。

 食事をチェックして、食事を楽しんでください。

 

            (参考資料)食品中の銅含有量及び常用量銅含有量