先天代謝異常症患者登録システムJaSMInについて

─ 登録のお願い ─

 

東邦大学医療センター大橋病院小児科

清水教一

 

1.    はじめに

 今回は,先天代謝異常症患者登録システムJaSMInについての説明と,登録のお願いをしたいと思います.JaSMInは,Japan Registration System for Metabolic & Inherited Diseasesの頭文字を組み合わせたものです.JaSMInは,すべての先天代謝異常症を対象とする登録システムで,ウイルソン病もその対象となっています.本登録の特徴は,先天代謝異常症を有する患者さんあるいはその保護者の方による自己登録制度であるということです.2013年から厚生労働省研究班の研究事業として登録を開始しました.そして,本システムを永続的に継続するため,2015年より日本先天代謝異常学会患者登録委員会により,運営・維持されています.すでに多くの会員の方に登録をしていただいておりますが,さらなる登録数の増加を目指しております.

 

2.    登録制度はなぜ必要なのか?

先天代謝異常症は,患者数の極端に少ない遺伝性希少難病です.ウイルソン病は,先天代謝異常症の中では比較的患者さんの数の多い疾患ですが,それでもやはり希少疾患に分類されています.近年,これら先天代謝異常症に対する病態解明の進歩に伴って,治療法の開発と臨床応用が急速に進展しています.特に新薬の開発や臨床試験を始めるためには,それぞれの病気の患者さんがどこに何人いるのか,どのような治療を受けて生活しているのか,受けている治療がどのような効果をもたらしているのかなどを知ることがとても重要になります.ウイルソン病でも,1993年に原因遺伝子が解明され,その後「遺伝子診断」という概念が出てきました.また,2008年には酢酸亜鉛がノベルジンとして日本でも処方されるようになり治療薬の使い方が変化してきました.ただ,このノベルジンの承認は米国で酢酸亜鉛が承認・販売されてから10年以上たってからの事でした.

日本では患者数や重症度,生活の質(QOL)など,患者さん達の実態が明確にされていなかったため,新薬の国際共同治験に参加できていませんでした.そのため,欧米での新薬の承認後に国内臨床開発に着手するため,深刻なドラッグラグが生まれるという問題がありました.このような問題を解決するために,日本先天代謝異常学会と相合協力関係にあるウイルソン病友の会を含む20の患者家族会の協力を得て,『先天代謝異常症患者登録制度(JaSMIn)』が設立されました.

 

3.    JaSMInに登録する情報と登録の流れ

 登録する情報は,@患者さんの氏名,A性別,B連絡先,C生年月日,D病名,そしてE治療歴です.約5分もあれば記入可能です.

 

 登録の流れは次の通りです.

@    JaSMInに登録のご希望があれば,ウイルソン病友の会事務局を通じて登録申請書(上記)が配布されます.

A    それに患者さんご自身あるいは保護者の方が記入を行い,JaSMIn事務局あてに郵送していただきます(登録申請書記入 & 収集)

B    JaSMIn事務局にて情報がホストコンピューターに入力されデータ化されます.

C    登録完了の通知として,JaSMMIn事務局から患者さん宛に登録カードが送付されます.

これで登録は終了です.

 

4.    JaSMInに登録するとどの様なことがあるか?

@     JaSMIn通信送付

1回のメールマガジン「JaSMIn通信」が送られてきます.JaSMIn通信では,ウイルソン病に限りませんが,先天代謝異常症の臨床と研究に関わる最新情報(特別記事)や各種イベント,患者会情報を定期的にお届けします.

A    新たな研究への貴重な情報に

登録いただいたみなさんの情報は,新しい診断や治療開発の研究を進めるために重要なデータとして活用されます.

B    新しい治療薬開発などへの参加

今後,新しい治療薬を開発する臨床試験などが始まった場合,そこに参加していただく可能性があります.患者さんの協力が必要不可欠な新しい研究や新薬開発などの情報を登録された患者さん方にお知らせして参加をお願いする可能性があります.

C    1回のJaSMIn通信以外年に1回リーフレットもお届けしております

 

 

 

5.    おわりに

 ウイルソン病に限らず,これからの臨床医学の研究は「患者さんとともに作っていく研究」が主流になっていくと考えられます.患者登録はそのために必要なものです.これを機会に,より多くの会員の方がJaSMInにご登録いただくことを,あらためてお願いしたいと思います.